研究内容

当研究室では、自然免疫に着目し、ウイルスに対する自然免疫応答や、ワクチン投与後の副反応が生じるメカニズム、がんの免疫療法、加齢による免疫システムの変化などを研究しています。

 ジカウイルスによる小頭症、あるいは、先天性風疹症候群など、ウイルスが原因となる感染症はいまだに克服されていません。また、アフリカでは定期的にエボラ出血熱が流行するなどしています。

 人は本来、ウイルスに対する免疫応答によってウイルスを排除します。特に、感染初期の自然免疫応答が重要ですが、ウイルスはこれを回避するメカニズムも持っています。

 

私達の研究室では、このウイルスに対する免疫応答について下記の研究開発に取り組んでいます。

・ウイルスに対する自然免疫応答の分子メカニズムの解明

・ウイルス感染に対する新たな治療薬の開発

       

 詳しくは、こちらのページをご覧ください。

ウイルスの感染によってミトコンドリア上で、TBK1タンパク質がリン酸化される。(緑:リン酸化されたTBK1、赤:ミトコンドリア)。TBK1は自分自身をリン酸化するキナーゼであるが、自己リン酸化することで活性化し転写因子もリン酸化する。これにより、強い抗ウイルス作用を持つサイトカインのI型インターフェロンの産生を誘導する(Oshiumi H et al PLoS Pathogens 2013)。


 ワクチンは、インフルエンザや子宮頸がんの予防など、ウイルスやバクテリアが原因となる病気の予防に非常に大切です。

 

 しかし、ワクチンは必ずしも万能ではありません。例えばアフリカなどで繰り返されるエボラ出血熱に対するワクチンは、なかなか良いものができなかったり、あるいは、日本での子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)の副反応の疑い例などの問題などがあります。

 

 当研究室では、副反応のないワクチンや、予防効果の高いワクチン、あるいは、副反応を予め予測する検査方法の開発(右図参照)をしています。

興味のある方は、こちらのページもご覧ください。


 加齢による炎症性サイトカインの産生は、2型糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病の原因となることが明らかとなってきました。また、いくつかの脂肪酸は自然免疫で働くToll様受容体を活性化し、TNF-αの産生を介して2型糖尿病発症の原因となることも明らかとなっています。当研究室の助教の粟井(塚本)は、マウス動物モデルを用い、加齢個体では炎症性サイトカインのIL-6により、抗体産生が減少することを発見しています(Tsukamoto H et al Nature Communications 2015 6:6702)。詳しくはこちら


がんの免疫療法

 T細胞の抑制に働くPD-1やCTLA-4をターゲットとしたがん免疫療法は劇的な効果を示し、2018年のノーベル賞の対象となりました。しかし、PD-1やCTLA-4を阻害する免疫チェックポイント阻害剤を用いた治療は全ての患者に有効であるわけではありません。私たちの研究室では、抗腫瘍免疫の研究を続け、血液中に存在するIL-6や、可溶型のIL-6受容体が抗腫瘍免疫に強い影響を与えることを発見しました。さらに、血中のIL-6量が多いと、抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体による治療効果が減弱することを発見しました(Tsukamoto H et al Cancer Research 2018)。このように免疫チェックポイント阻害剤が「効かない」メカニズムを解明することで、治療法を改善し、より多くの人を救うことができると期待されます。

 

 

PD-1やPD-L1を阻害する免疫チェックポイント阻害剤を投与すると、PD-1陽性の腫瘍随伴マクロファージからのIL-6の産生が増加します。産生されたIL-6はTh1細胞を阻害してしまうために、抗腫瘍免疫が上手く働かなくなります。そこで、免疫チェックポイント阻害剤と同時に、IL-6の阻害抗体を投与することで、スムーズに抗腫瘍免疫が誘導されます


免疫と神経(こころ)

 免疫で働く遺伝子は、中枢神経系でも発現していることは古くから知られています。しかし、その理由は未だ解明されていません。私達の研究室で発見した免疫応答に関与する遺伝子(Riplet遺伝子)も、ヒトで欠損があると学習障害の原因となることが報告されています。しかし、そのメカニズムは解明されていません。私達は、免疫とこころとの関連に興味がある学生を募集しています。一緒にこのメカニズムを解明しましょう。詳しくはこちら